Moogle

2022 年 4 月 〜 2023 年 2 月

企画・コーディング・動画制作・ナレーションなど制作すべて
(使用ツール: HTML・CSS・JavaScript・Adobe Illustrator・Figma・Git・Github Desktop)

アルゴリズムを最適化する中で削られた無駄・不便を体験できるGoogle 拡張機能です。検索結果と同じ画面上に表示される Moogle には複数の検索方法があり、これによりユーザーは最適化とは別の情報を日常的に取り入れることができます。 「富士山に登ると大変な分達成感があるように、検索結果も時には寄り道してみると何か面白い出会いに繋がるかも。寄り道したいとき、それができる環境を作りたい」と考え制作しました。

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Moogle とは

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Moogle とは、Google 拡張機能とその拡張機能を作る着想となった HP のことです。 この拡張機能は Google Chrome 内で機能し、検索結果と同じページに Google の最適化とは違う検索結果が表示されます。

拡張機能を有効にすると、検索結果の隣にモグラのロゴが入った検索結果が表示されます。Moogle は検索結果を 10 個表示することができ、この機能によりユーザーは、検索ワードから予想していたこととは少し違う検索結果に出会えるようになります。 主な検索機能は、Google が最適化した状態の逆順から検索結果を表示する「 Reverse 」です。

以下の画像は「りんご」と検索した結果です。りんごの形状や色、形などの情報を知りたい人にとって、 1 つ目の Wikipedia を見れば検索の目的を果たせます。そこでさらに Moogle が目に入れば、りんごの商品を売っているお店や、りんごに関するイベントの情報など、探す予定ではなかったけれど知ることができた情報が増えます。 このように、検索という一つの行動で「知りたいこともわかり、知る機会がなかったかもしれない情報に触れる機会ができる」のが、Moogle の魅力です。

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Moogle Google 拡張機能制作に至るまで

Moogle がユーザーに伝えたいイメージに近いのは、「店舗へ買い物に行くことと、 インターネットで物を購入する体験の違い」です。 前者は購入者がその場所まで出向き、目的の商品を探してレジで購入手続きをします。対して、後者は購入者が商品名を検索し、買い物カゴに入れて購入手続きをするだけ。いつでもどこでも数分で、簡単に目的の商品をを手に入れることができます。目的を達成するという意味だけであれば、後者で十分なのかもしれません。 この 2 つの大きな違いは、オフラインには手間がかかり、オンラインは最短で目的を達成できるということにあります。そしてそのオフラインの手間は、オンラインで解消する仕組みが発達しているのが今の世の中です。しかし手軽にできるからこそ、その過程で見落としてしまう価値もあるのではないかと考えました。

例えば本を購入するときに、本屋さんにいくのか、Amazon で購入するのか。 Amazon で購入する場合、ほしい本を選んで買ったらすぐにブラウザを閉じることができます。だけれど本屋さんまで足を運んだら、買ってすぐにお店を出る(目的が済んだらそこから離れる)ことのほうが少ないと思うのです。 ほしい本を探すのはもちろん、その過程でたまたま興味の持てる本を見つけたり、せっかく来たのだから、ゆっくりいろいろ見ようという気持ちで自然と長居してしまったり。ほしい本を手に取った後の、レジに向かう前に目的なくただ本を眺め歩く時間が楽しい人もいるのではないでしょか。 そういった、自発的になにかを探すだとか、今まで知りえなかったものが偶然目に入る、新しいものに出会う機会こそが、体験の価値なのではないかと思っています。

しかしインターネットは簡単で便利なので、できるだけこちらを利用したいと思う人も多くいます。ですがそれは、オフライン的な体験を得る機会が減るということでもあるのです。 たしかにインターネット上にも、自然と目に入る情報はたくさんあります。 あなたへのおすすめ機能やリスティング広告などコンテンツは豊富です。ですがオンライン上の情報はユーザーに対して最適化されすぎており、オフライン体験に比べると知ることができる情報の幅が少ないのではないでしょうか。 ならばその便利なインターネットの中に、オフライン体験のようなランダム性のある出会いの仕組みを作れば良いのだと気づきました。 そうすれば、インターネットを利用している間に自然と新しい発見があり、そして知ったことをつかって更に検索に活かすなど、オフラインと似た体験を作ることができるはずです。便利で簡単以外の価値を、店舗へ買い物にいくようなオフライン体験の価値を、身近で欠かせないオンラインサービスの中で、意識的に認識する機会を作りたいと考え制作しました。

Moogle ホームページ版

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そこでまずはじめに制作したのが、Moogle ホームページ版です。Moogle Google 拡張機能が完成する以前にこちらを制作していました。このホームページをつくったことで、拡張機能版を作り、検索機能を追加するというアイデアが生まれました。Google 検索結果の最適化順から、真逆の検索結果を表示する機能がお使いいただけます。

Google 拡張機能の使い方

Moogle Google 拡張機能の使い方動画です。動画編集、ナレーションなどを担当しています。 音声は大学設備のレコーディングスタジオを使用して録音しました。動画内では Moogle 拡張機能のインストール方法から、検索機能の使用方法までをお伝えしています。 説明のための音声を撮る機会はあまりなかったので、話す早さや抑揚の意識などが難しかったです。 きれいに録音するために試行錯誤するのも楽しかったので、またなにか声を使った制作ができたらと思っています。

展示に使用したパネルデータ

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最後の 2 枚の画像は、拡張機能のどの項目がどれだけ操作されたかを計測した結果です。検索機能用に使用していた api の都合上 Google アナリティクスを使用することが難しかったため、 計測が必要な箇所に透明な画像を設置し、その画像の読み込み回数などを用いて計測を行いました。

Moogle の目的は、「新しい情報との出会いの機会をつくること」

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知らなかったものを知るということは、選択肢や可能性を得るのと同じです。なにをするか決めるには、まず情報を知っていなくては始まりません。今している趣味や仕事、進学先などの存在も、誰かに教えてもらったり、調べ物をしてたまたま見かけたりと、知るきっかけが必ずどこかにあったはずです。人は知ったものの中から、自分はなにをするかを選んでいます。 そう考えると、情報を得る機会は多ければ多いほど楽しいのではないかとわたしは思います。大げさかもしれませんが、知っていることがひとつひとつ増えるたびに、少しずつ毎日が面白くなっていくのではないでしょうか。

Moogle を利用していただくにあたり大切だと考えているのは、毎回意識して Moogle 検索結果を見ていただくことではなく、ユーザーの環境に Moogle があるのがが当たり前であることです。 Moogle のように「あなたのためにカスタマイズされていない情報が、自然と目に入る状態で常にあり続けること」が大切なのだと考えています。いつもはその存在を忘れていても、時々気になったものがあればなんとなくリンク先に飛んで見る、くらいの気楽さで使っていただけるのが理想です。 また、気分やタイミングといった、ユーザー自身がもつ気まぐれに変化し得る要素も情報と出会う縁です。Moogle はその選択肢として「いつでも無意識に目に入る存在」でありたいと思っています。